今夜、シンデレラを奪いに 番外編
まともに挨拶する間もなく夏雪が「話があります」と高柳さんを連れていく。



「あなたに勤務態度などという低レベルな指導をしなくてはならないとは………

ですから…………は、そういう趣味をお持ちであっても構いませんが、せめて社外で………」


声を抑えてお説教しているのが聞こえてくる。

この微妙な空気で理緒さんと二人で何を話したらいいんだろう。まさかさっきの話題を掘り下げる訳にもいかないしとソワソワしていると、理緒さんは嬉しそうに外を眺めていた。


「もう人がたくさんが集まってきているんですね。私は今年初めて見るのでとても楽しみでして。」


「え?これから何か始まるん…………」








「そんなわけないだろ!」


理緒さんに聞こうとした質問は高柳さんの声にかきけされた。


「いえ、あの女より事情聴取済みです。

性依存症であれば適切な治療により改善されるでしょう。セラピストを紹介しますので」


「いや違うから。それに『あの女』とか言うな」


「確かに彼女は、女というより新種の生命体に見えますが………」


「ヒトの嫁に言う言葉かそれ……。そもそもどうしてそんな話題になったんだよ」



呆れた様子の高柳さんに理緒さんが駆け寄る。すると高柳さんは見たことない笑顔で彼女の頭を撫でた。横で見てるのが申し訳なくなるくらいの、いとおしげな表情だ。


「理緒、あの変な男に変なこと聞かれたでしょ?」


「いえ、ご熱心にアドバイスを頂きましたよ。

女の人にはバイオリズムがあるらしくて、特に集中したほうが良い期間があるそうです。」


「それ何を言われてるかわかってる?」


「バイオリズムでひらめきに違いが出るのかなって思ったんですけど………。

さらに整理の予定をお伝えすればサポートまでして下さるとのことで、ご親切な方です。」


「セイリ……。それでここにナツくんの連絡先が書いてある、と。」
< 8 / 25 >

この作品をシェア

pagetop