伝説に散った龍Ⅰ
しかしそんな姿にさえ癒されるのだ。
私は、かなり伊織にハマっている。
「なんだって?北見」
始業のベル直前で実験室に滑り込みで戻ってきた伊織は、なぜか不機嫌そうだった。
「昼休みに来て欲しいって。頼みがあるんだって。私に」
「なんの」
「知らない。後で言うって」
ああ、そういうことか。
あの女が企んでいることも、しょうもないがなんとなく分かる。
「行かなくていいからね」
「んー」
何より自分の自尊心を傷つけることをひどく嫌う伊織が取るあろう行動も。
なんとなく分かる。
「あんたは行くんでしょ」
「うん?」
「私が何言っても」
ーーそんなことを考えながら迎えた3限目。
なぜか今日は、LHRが中途半端な時間に置かれている。
ぼーっと色々瞑想を重ねていれば
「ーー今日は転校生を紹介するぞー」
担任の間延びした声とともに、転校生らしき4人の男たちが姿を現した。
『黒龍』だということに間違いはないのだろう、
放つオーラが周囲とは一線を画しているのを肌で感じる。