伝説に散った龍Ⅰ
たった一言。
たった一言で、世那の表情をこうも明るくしてしまうのだから、
やっぱり私の目は間違ってない。
こいつ、本郷の、
素質、と言うべきだろうか。
世那はそのまま、私の手を引いて校舎裏を出た。
「なあ、芹那、あ、その、ごめん、な。父さんのことも、母さんのことも、来那のこともっ、
芹那のせいじゃない「黙って。」芹那…」
それ以上、何も言わないで。
私を、失望させるな。
ごめん、世那。
私は、あんたから逃げるよ。
「ごめん、世那」
世那の言葉の続きは、なんとなく察した。
でも、ダメだった。
逃げ出すしか、
ーー今の私には能がない。