伝説に散った龍Ⅰ




たった一言。



たった一言で、世那の表情をこうも明るくしてしまうのだから、
やっぱり私の目は間違ってない。



こいつ、本郷の、



素質、と言うべきだろうか。



世那はそのまま、私の手を引いて校舎裏を出た。




「なあ、芹那、あ、その、ごめん、な。父さんのことも、母さんのことも、来那のこともっ、



芹那のせいじゃない「黙って。」芹那…」



それ以上、何も言わないで。



私を、失望させるな。



ごめん、世那。
私は、あんたから逃げるよ。



「ごめん、世那」



世那の言葉の続きは、なんとなく察した。



でも、ダメだった。



逃げ出すしか、


















ーー今の私には能がない。




< 40 / 113 >

この作品をシェア

pagetop