愛されたい、だけなのに。〜卒業から少し経ったお話〜
「いってきます!」
夏休みも明け、今日からまた大学が始まる。
「気をつけてね。何かあったら、すぐに連絡してね」
「はい」
結芽ちゃんのことがあってから、圭吾くんのお母さんは前よりも少し心配症になっている。
夏休み中も、¨どこに行くの?¨¨何かあったら連絡しなさい¨と出掛けるたびに言われた。
普通の大学生なら、うざいなって思うかもしれない。
けど私は、そんな経験をしたことがほとんどなかったから、心配してくれるのは少し嬉しかった。
「もう大学始まるのか」
「!」
玄関で靴を履いていると、寝起き顔で圭吾くんが階段から下りて来た。
「おはよう…ございます」
挨拶はしたが、目のやりどころがわからない。
「こら!圭吾!!!何で上半身裸なの!??朝からマナちゃんに、見苦しいもの見せないで!!」
お母さんの怒鳴る声が聞こえる。
「…」
いや、お母さん…見苦しいというより、寝起きなのにカッコイイというか、綺麗なんですけど!
綺麗に整った顔立ち、引き締まった体。
寝癖がついていても、マイナスにはならない。
カフェに来ているお客さん達が見たら、きっと鼻血出すかもしれない。
「気をつけてな。何かあったら、連絡しろよ」
「!」
そのままの恰好で、圭吾くんに頭をぽんぽんっとされる。
「はい…」
どうしても直視できなくて、俯いたまま返事をした。