愛されたい、だけなのに。〜卒業から少し経ったお話〜
「じゃあ改めて…いってきます!」
逃げるように、玄関から出た。
ドキン、ドキン。
まだ、心臓ドキドキしてるよ!!!
「何であんなにカッコイイんだろう…」
初めて上半身見たけど、引き締まってて綺麗で…
「って…」
思い出して真っ赤になってたら、ただの変態じゃん!
ダメダメ…今日から学校なんだから!
えっと、今日の講義はー…
考えていることを変えようと、鞄の中から予定表を出す。
カンカンカンー…
ちょうど、電車が通るみたいで踏切の遮断機が下りた。
圭吾くんのお母さんの家とカフェは、歩いて10分ぐらいのところにある。
だからここの踏切は、数日前に結芽ちゃんを助けた場所。
カンカンカンー…
この音を聞くと思い出す。
あれから結芽ちゃんを見かけることは、一度もない。
結芽ちゃんのお母さんも、カフェに来ない。
どうしているんだろ?
「この間さ、ここの踏切で自殺騒ぎがあったんだって!」
ドキ。
遮断機が上がるのを待っていると、隣に立った女の子が喋っているのが耳に入った。
「知ってる!3組の夏目結芽らしいじゃん!」
ドキ。
何でー…
名前までー…
驚いて、会話をしてる女の子たちを凝視してしまう。
「アイツさー…って、何?お姉さん」
ドキ。
不審そうな目の女の子たちと、目が合ってしまった。
「あ…いや…何で、自殺未遂があったことを知ってるのかなぁって思って」
この子達、あの時いなかったよねー…
「SNSで回ってきたんだよ。学校の友達からって…もしかしてお姉さん、結芽を助けた人!?」
「マジ!?」
女の子の一人がスマホを取りだし、スマホの画面と私を交互に見ている。
「すっげ!!本物だ!!」
興奮気味に言う女の子たち。
「ちょっと見せて」
手を出すと、すぐにスマホを渡してくれた。
「お姉さん、学校で有名ですよ!ヒーローみたいだって」
有名?そんなのどうでもいい。
これを見て、結芽ちゃんがどう思っているかどうかがー…
「…」
画像は、私が結芽ちゃんを線路から引っ張って助けた場面だった。
あの状況で、誰かが写真を撮っていた神経に驚く。
いや、それ以上に驚いたのはー…
画像の下に書かれている文字。
【#死に損ない】