愛されたい、だけなのに。〜卒業から少し経ったお話〜
「あれ、櫻井。忘れ物か?」
家ではなくカフェに行くと、開店準備をしている圭吾くんがカウンターにいた。
「…どうした?」
私の様子がおかしいことに気付いた圭吾くんが、カウンターから出て来た。
「何かあったか?」
カウンターに置いてあったおしぼりを片手に、近付いてくる。
「ん?」
圭吾くんは優しく、額から流れ落ちる汗を拭いてくれる。
「あの…圭吾くん…」
「ん?」
「!?」
目を合わせると、あまりにも至近距離で驚いた。
「いや…あの…」
ビックリした…
目を合わせていられず、俯く。
てか、冷静に考えてみれば圭吾くんのとこに帰って来ても、結芽ちゃんの居場所なんかわかるわけないじゃんね!
てか、てか、もしかしてもう学校行ってるかもしれないし!!!
感情のまま家に帰って来てしまったから、そこまで考えていなかった。
「櫻井?」
どうしよう…
ピロリン!
スマホの着信音が鳴った。
「ちょっと待ってろ」
鳴ったのは、圭吾くんのスマホ。
持っていたおしぼりを渡され、圭吾くんはカウンターに戻って行った。