愛されたい、だけなのに。〜卒業から少し経ったお話〜




「あれ、櫻井。忘れ物か?」


家ではなくカフェに行くと、開店準備をしている圭吾くんがカウンターにいた。


「…どうした?」


私の様子がおかしいことに気付いた圭吾くんが、カウンターから出て来た。



「何かあったか?」


カウンターに置いてあったおしぼりを片手に、近付いてくる。


「ん?」


圭吾くんは優しく、額から流れ落ちる汗を拭いてくれる。


「あの…圭吾くん…」


「ん?」


「!?」

目を合わせると、あまりにも至近距離で驚いた。


「いや…あの…」


ビックリした…

目を合わせていられず、俯く。


てか、冷静に考えてみれば圭吾くんのとこに帰って来ても、結芽ちゃんの居場所なんかわかるわけないじゃんね!

てか、てか、もしかしてもう学校行ってるかもしれないし!!!



感情のまま家に帰って来てしまったから、そこまで考えていなかった。



「櫻井?」



どうしよう…



ピロリン!


スマホの着信音が鳴った。


「ちょっと待ってろ」


鳴ったのは、圭吾くんのスマホ。


持っていたおしぼりを渡され、圭吾くんはカウンターに戻って行った。





< 19 / 35 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop