愛されたい、だけなのに。〜卒業から少し経ったお話〜






「結芽ちゃん!」


踏切近くの道路の片隅で、うずくまっている結芽ちゃんを見つけた。


「結芽ちゃん」

走って駆け寄ると、同じ目線になるようにしゃがんだ。


「結芽ちゃん…」


何度名前を呼んでも、返事がない。


結芽ちゃんの片手には、スマホが握られている。


まさかー…




「…私、死に損ないなんだって」

ぼそぼそっと喋った結芽ちゃんの声。

出会ってから、初めて聞いた声。

それが、そんな言葉なんてー…

「結芽ちゃん、それはー…」

「ねぇ、何で私を助けたの?」

ドクン。

「え…」


結芽ちゃんの言葉に、心臓が深く脈を打った。


「あの時死んでれば、こんな思いも、こんな画像も拡散されずにすんだのに!!!」


俯いたまま叫ぶ声は、心の悲鳴のように聞こえる。


…やっぱり、あの画像を見てしまったんだ。


「もう学校にも行けない。こんな画像が流れてるって言ったら、またお母さんに叩かれる。家にも居場所がない」


小さな声でぶつぶつと喋る結芽ちゃんの言葉を聴き逃さないように、耳を傾ける。


「もう…死にたい」


ドクン。


「今度こそ、死に損ないなんて言われないように…」



ドクン、ドクン。



心臓がうるさい。

息も苦しい。



死にたいと言っている人と向き合うのが、こんなに苦しいものだとは思ってもいなかった。



柳先生…ううん、圭吾くんもこんな思いで私と向き合ってくれたんだとー…












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