愛されたい、だけなのに。〜卒業から少し経ったお話〜



私は圭吾くんに…お姉さんに助けてもらった。


だから、今度は私が同じように苦しんでいる子を助けてあげたい。



静かに息を吸うと、心を決める。




「結芽ちゃん私もね、つい最近まで死にたいって思ってたの」



そう言うと、結芽ちゃんは勢いよく顔を上げた。


驚いた表情をしているが、ようやく目が合ったことにホッとする。


「中学生の時に親が離婚して、どっちの親も私が邪魔だったから高校入学した時には一人で暮らしてた。それまでは、まだ良かった。けど、高2の時にとうとう学費や家賃が払えなくなるって言われて、目の前が真っ暗になった。しかもその理由が、父親が再婚して子供ができたからって」


今でもあの時の気持ちを思い出すと、悲しみや憎しみが出てくる。


「その時、本当に自分が一人ぼっちになってしまったんだと実感した。誰にも愛されない、住む場所もない、学校も辞めなきゃいけない。もう悲しみや怒り、憎しみも消えて生きるのを諦めようとしたの」


私は、誰にも愛されない運命なんだと思った。


「けど、そんな時に当時の担任の先生…この間、病院で私の隣にいた圭吾くんが手を差し伸べてくれたの。初めは信じられなくて、何度も何度も圭吾くんから逃げた。けど、そのたびに圭吾くんは向かい合ってくれて手を差し伸べてくれた」


愛されても裏切られるぐらいなら、初めから手を取らなければいいと思っていた。



「たくさん迷惑かけて、心配かけてやっと気付いたの。私、こんなに愛されてるんだってー…」


榊原に蘭、校長先生もー…
あの人達がいなかったら、高校を卒業できなかったかもしれない。


「だから、私は今生きている。私を助けてくれた人達のために、私は生きていかなきゃいけないって思ったの」


圭吾くんのためー…

自分のためにも、生きていかなきゃいけないって思った。






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