愛されたい、だけなのに。〜卒業から少し経ったお話〜
「結芽ちゃん」
茫然としたまま、何も喋らない結芽ちゃんのお母さんの横を通り過ぎ、圭吾くんが近づいてきた。
「とりあえず、無事で良かった」
同じ目線になるように、圭吾くんもしゃがんだ。
小さくコクンと頷いた結芽ちゃんは、ぼーっと圭吾くんの顔を見つめている。
「結芽ちゃん、お母さんは結芽ちゃんが嫌いだから怒るんじゃない。叩くんじゃない。期待するんじゃない。それはわかってるよね?」
「…うん」
「わかってるんだ、偉いね」
ぽんぽんっと結芽ちゃんの頭を撫でる、圭吾くん。
「じゃあ、もう何を選択したらいいかわかるよね。結芽ちゃんが学校に来てないってお母さんから連絡が来た時、とってもお母さん慌ててたよ。ここに辿り着くまでも、顔色が青ざめていた。わかるよね?与える愛情がちょっと間違っていたかもしれない。けど、こんなにも結芽ちゃんが大切だってことが」
同じ目線で話す圭吾くん。
優しい、優しい笑顔を込めてー…
「…うん」
さっきよりも大きく頷いた結芽ちゃん。
…やっぱ、圭吾くんはスゴイなー…
私まで聞いていて、関心してしまった。