愛されたい、だけなのに。〜卒業から少し経ったお話〜
「後、もう一人。結芽ちゃんのお母さんと同じぐらい、結芽ちゃんを心配して怒ってくれる人がいることも知ってる?」
そう言うと、圭吾くんはポケットからスマホを取り出した。
スマホ画面を見せられ、驚いた。
「結芽ちゃんのヒーローは、近くにいるよ」
見せられた画面には、SNSのサイトが表示されている。
結芽ちゃんの画像が拡散されてしまった、サイトでもある。
でも、今度は何で私がー…
ーーー…
【「人の表面しか見てない奴らが、人の不幸を面白がるな!!!」】
#ヒーロー #怒られた #反省
ーーー…
返信の欄には、結芽ちゃんの同級生らしき人たちの謝罪が書いてあった。
結芽ちゃんは慌てた様子で、私の身体から離れてるとスマホを見た。
「…本当だ…」
スマホ画面を見たまま、ボソッと結芽ちゃんが言った。
「櫻井の言う通りだ。拡散されてしまった画像を見ただけで、判断して言ってしまった言葉よりも、近くにいて本当に結芽ちゃんのことを想って言ってくれた言葉の方が、何よりも大切だと思う」
自分のスマホ画面を見ていた結芽ちゃんと、目が合った。
「…お姉ちゃん…カッコイイね」
さっきとは全く違う目ー…
結芽ちゃんの変わりように、驚く。
「そうだよ。櫻井はカッコイイ!」
「!」
圭吾くんが念を押すように言った。
「弱さを知った人間は、きっと誰よりも強くなる。櫻井のようにな」
圭吾くんは結芽ちゃんに向けていた、優しい優しい笑顔を私に向けた。
キュンー…
胸が締め付けられる。
「もちろん、結芽ちゃんも弱さを知った。だから、これからは今よりももっと、もっと強くなる。…と、僕はそう思っていますけど、お母さんはどうですか?」
呆然として立っていただけの結芽ちゃんのお母さんが、いつの間にかこっちを向いて涙を流していた。
「…私も…そう思います…」
とてもとても、小さな声だった。
けど結芽ちゃんには聞こえたらしく、走ってお母さんの元に駆け寄った。
お互いに抱き締め合い、無事を確かめているようにも見えた。