愛されたい、だけなのに。〜卒業から少し経ったお話〜
カフェに戻るまで、お互いに一言も喋らなかった。
そしてカフェの前まで来ると、あることに気がついた。
「!」
そうだ!カフェの営業!!
「圭吾くん!今日カフェって…」
「臨時休業」
「臨時…休業って…」
平然と答える圭吾くんに、呆然としてしまう。
「それよりも…」
「!」
グイッと腕を引っ張られ、店内へと引きずり込まれる。
パタンと、静かに閉じたドア。
「…どれだけ心配したと思ってるんだ」
店内に入ったと同時に抱き締められ、声を絞り出すように言った圭吾くん。
「…ごめんなさい…」
また、心配をかけてしまった。
「頼むから、感情のままに突っ走らないで。ああいう時は、一人で行かないで」
抱き締められる腕に、力がこもったのがわかる。
「俺が死にそうになる」
心の底から、本当に心配してくれていたんだと伝わってくる。
「…ごめんなさい…もう心配かけないから…」
もし圭吾くんが死んだら、私は生きていけるかわからない。
だからー…
「圭吾くんもいなくならないで。私から離れていかないで…圭吾くんが好きだから…」
やっと言葉にできた、自分の感情。
圭吾くんは身体を離すと、汗で顔に張り付いた髪を取ってくれた。
そしてー…
「離れていかないよ。俺の中で何よりも大切で、守っていかないといけないのは櫻井だから」
そう言いながら顔を近付けて来て、触れるだけの優しいキスをした。
もう一度抱き締め合った時、改めて幸せだと実感した。