愛されたい、だけなのに。〜卒業から少し経ったお話〜
店内は女の子たちばかりで、とても賑やか。
その中を、圭吾くんに渡されたものを持って通り抜け、店の一番奥のテーブルに向かった。
「結芽ちゃん」
奥まったところにあるテーブルに顔を出すと、椅子に座っていた結芽ちゃんが顔を上げた。
「お姉ちゃん」
満面の笑顔でそう言った結芽ちゃんの表情を見て、一安心する。
「元気そうだね、良かった!これ、圭吾くんから…ゆっくりしてって」
結芽ちゃんの前のテーブルに、ショートケーキとオレンジジュースを置いた。
「わぁー!ありがとう!美味しそう!!」
「喜んでもらえて良かった」
自分の前のテーブルにもショートケーキとジュースを置くと、結芽ちゃんと向かい合うように席に座った。
「いただきます!」
手を合わせそう言うと、結芽ちゃんは美味しそうにケーキを食べ始めた。
その表情を見て、つい数日前の出来事だったはずなのに、人ってこんなにも変われるのかと驚いてしまう。
「って、食べてばっかりじゃダメだよね」
「?」
結芽ちゃんは持っていたスプーンを置いた。
「どうしたの?」
「今日はお姉ちゃんにお礼を言いに来たの」
「え?」
さっきとは違い、結芽ちゃんは真剣な表情になった。
「助けてくれてありがとう」
結芽ちゃんは、ぺこっと頭を下げた。
「…」
お礼を言われるなんて思ってもみなかったから、驚いて言葉が見つからない。
「お姉ちゃんがいなかったら、私は死んでたかもしれないでしょ?それを今考えると、怖いなって思って…だから、あの時私を助けてくれたお姉ちゃんにお礼を言いたくて来たの」
「そんな…私は全然…」
「ううん。お母さんと仲直りできたのも、あんな画像流されても学校に行けたことも、お姉ちゃんの庇ってくれたおかげで友達ができたことも…全部、全部込めてありがとうって言いたくて」
話ながら、嬉しそうに笑う結芽ちゃん。
こんな風にお礼を言われるなんて、初めてで…何か涙が出そうになる。
「うん…私こそありがとう…でもね、私はただ結芽ちゃんに手助けをしただけなの。本当に、嫌なことや悲しいことを乗り越えたのは結芽ちゃんだよ。それだけは、忘れないで」
涙を見せないように、俯きながら言ってしまった言葉。
「うん!!」
だけど、元気そうな声で返事が返ってきて、私の想いが伝わったんだと思った。