ちゃんと伝えられたら
寺本さんは私の耳元で囁く。

「仕事の話でも良いですよ。」

私は寺本さんに触れられそうになった耳が熱くなっているのを感じた。

いつもの私なら何か理由をつけて何とか帰っていただろう。

でも今日は少しヤケになっている。

さっき見かけた坂口さんの姿が頭をよぎる。

道人さんとの事も消化不良だ。

「そうですね、今日は会議ではないですし。」

寺本さんの顔から力が抜けたような笑顔がこぼれた。

「…良かった。本当は避けられているんじゃないのかとそればかり気にしていました。」

私の前で大げさに深呼吸をした寺本さん。

「パスタでも食べに行きましょうか?入ってみたいお店があるんですけど、なかなか一人では行きにくくて。」

少し恥ずかしそうに頭を掻く寺本さんは可愛く見える。

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