ちゃんと伝えられたら
資料の棚にもたれかかって、私は宙を仰ぎながら大きな溜息をつく。

だめだ…、気を緩めると涙が出てしまいそう。

私は更に顎を上げて、低い天井を見る。

そこに誰かが入って来る気配がした。

私は慌てて棚の方を見て、資料を探す振りをする。

「篠田。」

ああ、この声は…。

坂口さんは私の背中から私をそっと包み込んだ。

「さ…、坂口さん?」

でも坂口さんは何も言わない。

思いがけない状況に、私もそれ以上声にならない。

「…済まない…。ちょっと今日の俺はおかしい。」

大きな息を吐きながら、それでも坂口さんの腕の力は緩まない。

「昨日は済まなかったな。」

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