ちゃんと伝えられたら
「優秀な補佐を持つと、自分も楽をさせてもらっています。」

坂口さんも私から見ると、明らかな営業スマイルを見せる。

「では、失礼します。篠田さん、また食事でもしましょう。連絡を入れます。」

「ありがとうございました。」

私は引きつる顔を自分で感じながら、頭を下げた。

あれからどんなに誘われても断っている私。

やっぱり仕事上でかかわりがある間は外で会うのは止めましょうと、寺本さんにははっきり伝えたはずなのに。

あんな言い方をされたら…。

坂口さんの表情がこわばっているように感じる。

「行くぞ、篠田。」

素っ気なく言った坂口さんの後を社用車までついて行こうとしたが、坂口さんのペースはすっかり元に戻っている。

最近仕事以外は投げやりになっている私は大きく肩で息をする。

あの背中に追い付こうと必死だった自分はどこに行ってしまたんだろう。

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