ちゃんと伝えられたら
それは一瞬の事だったと思う。

私から離れた坂口さんの顔から私は視線を外せない。

「済まない。」

坂口さんはそれだけ言うと、資料室から出て行った。

取り残された私はただ茫然と立ちつくす。

今のは間違いなくキスだったよね…。

私はそっと唇に手を持っていく。

まだそこにはしっかりと感触が残っていて、さっきの事が夢であったとはとても思えない。

「坂口さん…。」

私は口の動きを手で感じる。

「おーい、篠田、ここに居る?」

先輩の沢野さんが私を探しているようだ。

「課長が呼んでいるよ。」

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