ちゃんと伝えられたら
いつもの会社のすっきり片付いた坂口さんのデスクからは想像もつかない。

「これが俺の本性だ。誰かさんに補佐してもらわないと仕事もプライベートも立ち行かなくなっているというのが本当の姿だ。」

この部屋の状態なら…、あの三島という女性はここに足を踏み入れてはいないのだろう。

「ここには寝に帰って来るだけだ。志保に今更見栄を張る事もないしな。ありのままを見てもらおう。」

坂口さんは弱々しく笑う。

「話を聞いてくれるか?」

坂口さんと私はソファに座る。

「はい。」

私はふっと身体の力を抜いた。

「あの雨の日より少し前、そうあのプロジェクトがうちの会社に決まってすぐのタイミングだった。俺は取引会社の常務から呼び出された。」

話しながら、坂口さんは上着を脱ぎネクタイを緩めた。

「俺は挨拶方々、取引会社に赴いた。その常務…、三島常務には以前仕事でお世話になった事があった。でもその時に常務から呼ばれたのは、仕事の話ではなかった。俺に決まった相手が居ないのなら、一度自分の娘と会って欲しいと言われたんだ。」

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