ちゃんと伝えられたら
私はだまったまま、坂口さんの話を聞く。

「時期的にも俺には断る事は出来なかったし、会うだけならと思った。」

その辺の事情は私にも分かるため、私はゆっくりとうなずいた。

「しかしどうにも俺は三島常務のお嬢さんと価値観が違うように感じた。だから初めて会ったその日に、常務へ断りの電話を入れた。」

そうだったんだ…、でも…。

「しかしどうもお嬢さんに俺は気に入られてしまったようで、常務の方からすぐに結論を出さないで、何度か会ってからじっくりと返事をしてほしいと頼まれてしまった。」

本当に困ったような表情を見せた坂口さん。

「俺は正直どうしていいのか分からなかった。きっとこの後何度会っても結果は変わらないだろうと思っていたからだ。」

そして坂口さんは静かに微笑む。

「その時に何故か浮かんだのが志保の顔だった。俺はやっと自分の気持ちに気がついたんだ。」

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