ちゃんと伝えられたら

「三島常務のお嬢さんの事ですよ。」

「あっ…、私には分かりません…。では…。」

私はそれだけ言うと、電話を切ろうとした。

「篠田さん！」

寺本さんの声に、私はもう一度受話器を耳に当てる。

「仕事上であなたに落ち度はありません。むしろプロジェクトがきちんと回っているのはあなたの書類作成能力の高さのおかげだと思っているくらいですから。」

「ありがとうございます。でももう私は関係ありませんから。」

私が自分が思っているよりも冷めた声が響く。

「俺がこちらで出来る事をしますから…。」

「いえ、もう良いんです。」

いくら寺本さんが頑張ってくれても、上層部で決まった話ならそう簡単に覆す事なんてできない。

返って迷惑をかけるだけだ。