ちゃんと伝えられたら
私の目の前に綾人さんの顔が浮かぶ。

「違うんです…、ち…、がう…。」

私はそのまま座り込んでしまった。

「綾人さんが…、悪いんじゃない…。」

もう限界だった。

私はそのまま泣き崩れてしまった。

道人さんは私の前に回って…、そして膝をついて私を抱きしめた。

道人さんは何も聞かなかった。

ただただ私を抱きしめていてくれた。

まるでそれはあの雨の日に、綾人さんがしてくれたように。

その事に安心したのか、私は意識を手放してしまった。

「…志保ちゃん、大丈夫?」

私は見知らぬ部屋で目を開けた。

心配そうに私を覗き込んでいるのは、道人さんだ。

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