ちゃんと伝えられたら
「すいません、私…。」

道人さんは起き上がろうとした私を押しとどめた。

「こんなに熱があったのに、よくあそこまで自分で歩いて来れたものだよね。」

呆れたように、道人さんは苦笑した。

「志保ちゃん、分かっている?君は丸一日眠っていたんだよ。」

「えっ?」

「大丈夫だよ、会社には親戚だと言って連絡しておいた。」

「すいません…。」

道人さんは悲しげな表情を見せた。

「…兄貴にはまだ連絡していないんだけど…。」

道人さんの言葉に、私は思いきり首を振る。

「道人さん、お願いです…、お願いですから、私の居場所は綾人さんには言わないで下さい。」

私のそんな様子を見て、道人さんは首をかしげる。

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