ちゃんと伝えられたら
綾人さんはそれをあっさり上着の内ポケットに戻す。

「うちはひどい事になっているぞ。」

綾人さんは私を見下ろして、そして笑った。

「掃除のし甲斐がある状態になっている。…志保、お前のせいだ。とりあえず早く中に入ろう。」

綾人さんが言った通りの部屋を前にして、私は目を丸くする。

「私が道人さんの部屋で眠っていたのは丸一日だったはずですよ?」

「手当たり次第に何かをしていないと不安で…。何かを思いついては外へ出たと思ったらまた戻ってきたりで、自分でも何をしているのか分からなかった。スマホも全くつながらないし…。」

そこで私はスマホを取り出す。

もちろん充電はなくなっていて…。

「なあ、志保。どうしてお前があのプロジェクトから外されたか、どうしても俺には分からなかった。担当の山田さんに連絡を取ったが、どうも上層部からの鶴の一声だったらしい。」

足の踏み場もないリビングで、何とか二人でソファに落ち着く。

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