ちゃんと伝えられたら
「早くしないと遅刻です。」

「志保が煽るからだ。」

二人で会社までの距離を喧嘩しながら走っていた。

「ほら。」

私に手を伸ばす綾人さん。

「大丈夫。ちゃんと会社のそばになったら放すから。」

私が一瞬戸惑った事を綾人さんは見抜いたようだ。

結局勢いのまま会社のロビーに入ったところで、その手は自然とほどかれた。

会社で会議へ出掛ける支度をしていると、課長が近づいて来た。

「おはよう、篠田さん。もう話はついているから堂々と会議に参加して来てくれ。」

「はい。」

私からは自然と笑みがあふれる。

「坂口くん、篠田さんと公私ともに頑張ってくれたまえ。」

そんな言葉を軽々しく発した課長に、私達二人はぎょっとする。

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