ちゃんと伝えられたら
「篠田は気が付いていない?最近いろんな文章の最終チェックが全てあなたのところに回ってきている事に。」

「確かに、量は多くなったなと思っていましたが…。」

その代わり時間がかかってしまって、いつも申し訳なく思っていた。

「篠田のチェックの後はほぼ完璧なのよ。内容的な知識も持ち合わせているし、漢字や言い回し等の文章の構成も一度で指摘してしまうから、こっちも楽をさせてもらっているのよ。」

知らなかった…、私のそんな面が評価されていたなんて。

「それを最初に気が付いたのが坂口さんなの。だから今回の指名も納得よ。坂口さんは意外と篠田の事をちゃんと見ているんだから。」

沢野さんはそう言ってから、思い出したように笑う。

「そうそう、こないだの雨の日。坂口さんが篠田に仕事を頼みたかったらしくて、外回りから連絡を入れてきたの。」

私の不思議そうな顔を余所に、沢野さんはニヤニヤし出した。

「篠田が外出しているって言ったら、どこへ行ったって凄い勢いだったのよ。どうしても篠田を捕まえたかったんでしょうね。」

沢野さんの言葉に私はその時の事を思い出す。

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