ちゃんと伝えられたら
私はびくびくしながら答えた。

「違う。どうしてこんな雨の中を走っていたのかを聞いているんだ。」

はい、ごもっともです。

「会社に早く帰ろうと思ったら…。」

そう言いかけた私に坂口さんはタオルを投げてきた。

「仕事用だから、そんなにきれいじゃないが使え。そのままでは風邪を引いてしまう。」

そう言われて前髪からしずくが滴っているのに気付いた。

「…すいません…。」

私はおずおずとタオルで頭を拭き始めた。

「俺が見つけなかったら、大変な事になっていたぞ。」

坂口さんの言葉に、シュンとなる。

「…すいません…。」

私はもうそれしか返す言葉がなかった。

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