ちゃんと伝えられたら
「はい、そのためにこのファイルを資料室から持ってきたところです。」

私も同じように仕事モードで答える。

「私が引き留めちゃったのよ。二人とも邪魔して悪かったわね。」

そう言いながら、坂口さんと沢野さんは笑顔でうなずき合っている。

「じゃあ、行くぞ。」

坂口さんが沢野さんに手を上げる。

私も慌てて沢野さんに一礼をすると、自分のデスクに小走りで戻る。

もうこの新しいデスクにもすっかり慣れた。

しかし…、どうしても私のデスクは資料やファイルでいつも乱雑な状態だ。

それに引き換え、坂口さんのデスクはいつもスッキリとしている。

やっぱり仕事の出来る人は違うようだ。

「篠田、時間がない。」

「はい。」

私は仕事用の大きな鞄を肩にかけると、オフィスの入口で待っていた坂口さんを目で追う。

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