教育係の私が後輩から…

寝室へ入ると、社長をベットへと移動させ、私はシャワーを借りる。
シャワーを借りた後は、キッチンに用意してあるブランデーを持って、有馬社長の待つ寝室へ再び入る。

「あれ? それは、うちの新商品のナイトウエアーだね?」

「はい。似合いますか?」

ピンクのバラが施された、紫色のシースルーのナイトウエアー。
自宅ではスウェットしか着ないが、有馬社長宅にお泊まりする時だけ、社長の会社の商品で、ちょっと大人の女を演出してる。

「透けて見える白い肌…宣美に、とっても似合うよ?」

「有り難うございます。でも奥様の方がよくお似合いですよね?」

「そうだね? 若い頃の妻は本当に美しかった。
あの頃の妻に着せたら、
さぞかし私の性欲は抑えられなかったと
思うよ?」

「少し妬けちゃいます。」

「あはは…
今は互い じぃじぃと、ばぁばぁだがね?
今でこそ、私は社長などと崇められてるが、
あの頃の私は名ばかりの社長だった。
小さな倉庫に社員数名の小さな会社で、
雑用様だろうと、
自分でしなくてはいけなかった。
彼女との結婚も周囲から随分反対されたよ。
特に妻の両親からはね…
彼女の実家は名のある家で、その上、
誰もが認めるほど美しい人だったから、
良家からの縁談話も多かったらしい。」

「そんなお嬢様の心を射止めたのが、
有馬社長。」

「あの時、私が諦めていれば、
彼女は今の様な苦労はしなかっただろうに…
申し訳なく思うよ…」

「どうしてですか? 
社長は今でも奥様を愛していらっしゃる。
奥様も同じ気持ちだと私は思います。
私は結婚したこと無いし、
人を愛したことも無いけど、
とても幸せな御夫婦だと思います。」

「うん。私は幸せだよ? 
妻がいる身で、
こんな若くて綺麗な女性が
相手してくれるんだからね?」

「私も幸せです。
私を綺麗な女性と言ってくれる男性は、
少ないですから?」

「彼…猪瀬君は?」

「彼も他の男(人達)と同じですよ?」

「そうは見えなかったが…?」

「社長の目、耄碌したんじゃないですか?」

私達は顔を見合わせ笑った。

その時『ガッタガッタ!』と物音がした。

「「!?」」

えっ!?
私達の他に誰も居ないはずなのに…




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