教育係の私が後輩から…
「立場ってなんですか?」
「そ、そんなの普通に言う立場よ!」
「それは貴女が
一番嫌う物なんじゃないですか?」
「……」
「普通だとか、立場だとか、そんなの貴女には関係ないから、どんな酷い噂をたてられようが、貴女は否定してこなかった。」
「それは…」
「有馬社長夫妻に迷惑が掛からない様にですよね?
貴女が否定し、もし、真実が表に出てしまうと、有馬社長夫妻を悪く言う人達が出てきてしまうかもしれない。
だから、自分一人が我慢すれば良いと思ってる?
七本さんが、真実を皆んなに話し、貴女への誤解を解こうと言った時も、
だから、貴女はあんなに怒った?」
「違う!
そんな、カッコいいもんじゃない。
私の勝手な思いに他人を巻き込みたくなかったから!」
「じゃなぜ、そんなに僕と貴女の立場を気にするんですか?
今の僕らの関係は、先輩後輩の関係で、同僚です。
同僚が同僚の心配しても、何も不思議はない?」
「仕事休んでまで心配するのは間違ってる!」
「じゃ、もし、僕が怪我をして動けずに居たら、どうしますか?」
「それは…」
「貴女はきっと、僕と同じ事をした。」
「でも、猪瀬くんは、会社を継ぐ人なの!
悪い噂のある私なんかに関わってはいけない人なのよ!?」
「でも、その噂は間違ってる?」
「間違っていようと、噂がある以上、君の命取りになりかねない。」
「そんな事くらいで、僕は叔父に負けませんよ?」
「なら、今はその事だけを考えて!」
「嫌です!
それでは七本さんに負けてしまう。
貴女を七本さんに取られてからでは遅い。
僕と付き合ってください。」
私はなにか競争の景品か!?
「お断りします。」
「どうして?」
「君が私へ持ってるものは好意でも何でもない。ただの罪悪感なのよ?
真実を知らず、私を無理やり犯した?」
「違う!!本当に貴女が好きなんです!」
「兎に角…帰って!
これ以上、迷惑なの!!」
「…分かりました。今日のところは大人しく帰ります。でも、僕は貴女を諦めませんよ?」
誠一郎は玄関に荷物を置いて帰って行った。
馬鹿…
あんたが思ってるほど
私は良い女じゃないのに…