教育係の私が後輩から…

「折角買い物して待ってたんですから、いれて下さいよ?」

誠一郎の言葉に、仕方なく二人を部屋へ入れた。

「何だよこの鞄、邪魔だな!? それにしても、このシール…佐伯って随分海外行ってるんだな?
そんなに旅行好きなのか?」

私は玄関に大きなスーツケースを置いてる。

それはいつでも海外に飛べる様にだ。

取引先の社長や、その家族の趣味趣向にあった、限定品が出れば、いつでも買い求めに行けるようにしてる。

数百円程度なら自腹だが、ブランド品などの高価な物になると自腹はキツイ。勿論、経費でも落とせないから、買った時の領収書を添え、相手へ渡す時は現金回収してる。
それは変な誤解を招く事なく、相手との交友を深める為でもある。

Y社の矢田社長や、モデル事務所八角の社長とも、そういった努力でパイプを築いてきたのだ。

「文句があるなら、帰って良いよ?」

「いえ、文句などありません!」

その後、私達は誠一郎の料理に舌鼓をうち、美味しいお酒を頂いた。

「もう食べ終わったんだから、そろそろ帰ってくれるかな?」

「まだ良いじゃん! 明日は休みなんだし? まだ飲もうぜ?」

「だめ! 帰って!!」

私の部屋で、誠一郎の料理とお酒、あの時の事がどうしても頭を過る。
誠一郎は頭を下げてくれたし、今の誠一郎と、あの時の誠一郎とは違うと分かっている。
分かっていても、思い出すと、気分が悪くなる。




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