教育係の私が後輩から…
「じゃ、僕、片付けしますね?」
折角の誠一郎の申し出だったが、早く二人には帰って欲しい。
「片付けくらい、私、後でやるから、猪瀬君も帰って?」
「無理ですよ、その手では?」
「え?」
足首の捻挫は良くなっていたが、右手首の捻挫は、松葉杖をついていた為、まだ治っていなかった。
全然良くなっていないのに、普通に仕事していれば、良くなるわけがない。そのうえ退勤後の私は、資料課のデーターの打ち込みまでしてる。
「まだ、手首の捻挫良くなってないですよね? 寧ろ悪くなってる?」
「どうして…」
気づかれない様にしてたのに…
「先輩は、右足首の捻挫と右手首の捻挫です。右足を痛めてる時は、松葉杖は右につき、右手で支える。その為、痛めてる右手の治りは遅れる。そのうえ、先輩はいつもの様に仕事は普通にこなしてるし、資料課の事も毎日退勤後やってますよね?」
どうして…
知ってるの?
「え!? 佐伯、手首治ってないのか?」
驚く七本に、「心配ないって!ほら、大丈夫!」と腕を振って見せる。
痛っ!…。
「もしかして、明日も資料課へ行くつもりなのか!?」
心配する彼らに私は
「いや…えっと…明日は実家に…」と、嘘ついた。
しかし、二人には誤魔化しは効かなかった様だ。
「明日は俺達が朝から行って、打ち込みやるから、鍵渡せ!」
結局、七本に旧社屋の鍵を奪われ、誠一郎には後片付けまでしてもらった。そして「お大事に!」と言って二人は帰って行った。