教育係の私が後輩から…

「会社の代表として恥ずべき行為だと思わんのか!!」と、父親である副社長が、誠一郎を怒鳴りつける。

怖っ…

温厚だと言われてる副社長がここまで怒るなんて…
まぁそれだけ、私達の話はあり得ない話なんだよね?

「副社長の言われるのもごもっともだと思います。」

「貴女は口を挟まないでください!!」と、鬼の様な形相の誠一郎の母。

ゔ…
こっちも怖い…

「失礼しました。」

淫乱女と囁かれてる女を、大事な跡取りの嫁に迎えれば、周りからなんと言われる事か…
会社のトップになる者の考えることではないと、私も思います。

「ちゃんと考えた上で、僕は彼女と結婚したいと言ってるんです!」

誠一郎の言葉に、
「ダメダメ! 絶対にダメよ!
あなたのお父様だってどれだけ後ろ指指されたことか?
庶民には庶民の世界があるの!」と、気がふれたように猛反対する母親。

そうです!
私の世界は私のもの、あなた達に踏み荒らされたくない!
庶民とか言われるのはしゃくだけど、私もその意見に賛成です!

「 一応私の親だからと筋を通しましたが、話になりませんね? 宣美帰るぞ?」

「ちょっ、ちょっと待って!」

「誠一郎さん!待ちなさい!」

誠一郎は母親の呼び止めに応える事なく、部屋を出て行った。

「すいません…きっと今は、反対されて意固地になってるだけだと思います。 彼に少し考える時間をあげていただけませんか? きっと考え直すと思いますから…」

「当たり前です! あーもう! あなたの顔見てるだけで気分悪くなるわ! さぁ! あなたも、早く帰って!」と、言って部屋のドアを開けて待つ誠一郎の母親に、私は、頭を下げ部屋を出ようとした。

え?
これは…

「すいません…最後に一つだけ、教えて頂けますか?」

「なに!?」

「奥様のお使いになってる香水はどちらの物でしょうか?」

「これは、主人が私のためだけに、某メーカーの調香師に作らせた、世界に一つだけの香水よ! 庶民のあなたなんかに似合わないし、手に入らないわよ!?」

庶民、庶民って!
そんなに庶民が悪いの!?
あんた達はその庶民が働いてるお陰で、綺麗な洋服も、贅沢な食も食べられるんだからね!?

「教えて頂き有難うございました。失礼します。」

腹の立つ相手だが、私は大人の対応として、深く頭を下げて部屋を出た。




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