教育係の私が後輩から…

誠一郎の実家から帰る際、誠一郎に、結婚も、今後の交際も全て断った。

「結婚は本人達だけの問題じゃない。家族も関わってくるの…この先ずっと誠一郎の両親から、庶民、庶民って見下されるのは嫌! いくら誠一郎が守るって言ってくれても、それはお荷物になってるとしか思えない。そんな結婚生活が、上手く行くわけない! だから、このまま別れましょう? サヨウナラ」

私は誠一郎の車に乗らず、そのまま一人で帰って来た。

それ以来私達は、連絡も取り合ってないし、会社でも、必要以上の事は話さなくなった。

このまま、私の事忘れてくれれば良い…

だがその時、まだ知らない新たな火種がくすぶリ始めていた。

誠一郎と別れて二ヶ月が過ぎた頃。

「佐伯!今日のプレゼン、第1会議室抑えたって言ってたよな?」

「えっ?うん。そうだけど?」

「会議室キャンセルされてるぞ!?」

「嘘っ!?」

七本に教えられ、慌てて確認すると、予約入れてあった会議室が別の部署の人の名に変わっている。
ホントだ会議室キャンセルされてる。

どうして…?
大事な日なのに…
もう時間がない。

どうする?
でもなぜ?
今朝の時点ではちゃんと抑えられていたのに…

会議室の予約は社内システムで管理されてる。
予約した本人のIDか、総務の部のIDが無ければ、勝手にキャンセル出来ないはず…?
私はキャンセルしてない。
じゃ、総務部の誰かって事…?

ダメ! 今、そんな事考えてる場合じゃない!
会議室の代わりを考えないと…
どうする? どうすれば良い??

焦るな!
考えろ!
なにか方法があるはず…?

あっ恭子!

恭子の勤めるホテルなら、会社からもそんなに遠くない。
今からの時間なら、昼食を兼ねてと理由もつけられる。

「もしもし恭子? 私あんたに貸し有ったよね?」

『ブチッ』

電話を切ったのは誠一郎だった。

「なにするの!?」

「外に出るより、社内の方が良いでしょ?」

「でも会議室は…」

「僕に頼りたくないかもしれないけど、今回だけは甘えて下さい。重役会議室を開けてもらいました。」

重役会議室…

「ありがとう…助かった。」

「お礼なんて言わないで下さい。多分…僕のせいですから。 すいません!」

頭を下げる誠一郎に、思わず手を伸ばしたくなる。 だが、ここで彼に手を掛ければ、余計彼を苦しめる。

私は自分で、自分の手を抑えた。

「猪瀬君、私に何かしたの?」

「直接したという事では有りませんが…」

「だったら謝る必要ないでしょ?」

なにが起こってるの?
誠一郎が謝るって…
彼には、なにか見当が付いてるの?




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