限りない愛~甘い彼に心揺れて~
ギュッと力を入れたあと、副社長はゆっくりと離れた。あ、離れちゃうの?

消えたぬくもりに寂しさを感じて振り向くと、彼の体はキッチンの方に向いていた。


「あ、副社長」

「ん、どうした? 今コーヒー淹れるから待っていてくれる?」

「ううん、なんでもない。うん、ありがとう」

「それとさ、やっぱり会社以外で副社長と呼ばれるのは嫌なんだけど」


コーヒーを待とうとソファーに腰掛けた私は{へ?」と気の抜けた声を出す。副社長と呼ばれるのが嫌?

確かにここは会社ではないから、その気持ちは分かる。副社長は『宮坂さん』と『真帆』を使い分けていて、『真帆』と呼ばれるのは特別感もあって嬉しい。

副社長も同じように嬉しくなるのかな。そうなら私も……でも、私はなんて呼ぶのがいいのだろう?

30を過ぎた副社長の役職を持つ人に『大ちゃん』は失礼だろうし。


「なんて呼ばれたいの? 大祐さん、大祐くん、大祐さま?」

「おいおい、さまはないだろ?」

「え、意外に楽しいかなと思ったんだけど」

「アハハ、楽しいか……俺としては昔のように大ちゃんでもいいんだけど」
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