限りない愛~甘い彼に心揺れて~
社長は資料を膝の上に置いて、腕組みをする。良い意味で言ったのが、悪い意味で言ったのか読み取れないが、大野憲一さんを知っていることだけは分かった。

顔写真付きの大野さんのプロフィールはフォルダに入っているから、聞かれた場合は見せる予定だった。恥ずかしながら、私は大野さんのことを今日初めて知った。

たまにワイドショーに出演もしているから、知る人ぞ知る人物らしい。


「この対談には、宮坂さんも同行するの?」

「いえ、私は担当ではないので」

「ああ、そうだったね。今日は私が呼んだから来たのだったね。貴重な時間を悪かったね」

「い、いえ。あ、あとこちらが当日のスケジュールでところどころに要点が書いてあります。ご覧になっていただけるとお分かりになるかと思いますが……」

「うん、分かった」


流れの中での重要なポイントだけを説明を始めたが、途中で止められてしまい「はい?」と返した。

社長は持っていた資料を秘書に渡す。私の説明が下手で聞く気が失せたのだろうか。どうしよう……。


「あとは、こちらで見るからいいよ。不明な点があったら、部長に聞くから」

「え、でも…」
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