君と出会えた物語。
先生の後をついていき教室に戻る。
もうチャイムはなっているので自分の席に着いて教材を広げた。
「え〜、授業の前にみんなに報告がある。下田が家庭の事情で新学期から転校することになった。転校しても仲良くしてやってくれ。…以上。授業始めるぞ!」
クラスが騒めくのが分かったけど…教科書に目をやってノートを開いた。
キーンコーンカーンコーン…
「朱莉!昨日の話って転校のこと!?」
終業の合図と共に江美が駆け寄ってきた。
「うん…自分の口から言いたかったんだけど、先生に先越されちゃった。」
ふざけるように笑って言ったのに、江美は泣きそうな顔をしている。
そんな顔しないでよ...。
私だって寂しいよ。
どうでもいいって思うようにしてるけど…やっぱり本当は寂しいに決まってるじゃん。
「朱莉どういうこと?」
ヒロと達也くんも私の机に集まる。
「うちの会社経営不振で家手放すことになったの。だから、会社の近くに引っ越すことになって転校するって感じ。」
「まじか…。大丈夫か?」
心配して肩に手を置く達也くんに頷く。
「昨日...家の前で泣いてたのはその事でか。」
「昨日泣いたから…もう大丈夫になった!」
ヒロがいると無駄に強がってしまう私がいる。
だから、流れそうになった涙を上手く隠した。
「目障りなやつ消えてくれて私は嬉しいなぁ。」
前田加奈は相変わらず私のことが嫌いみたい。
そんなことすら安心感を覚える。
「加奈ちゃん…朱莉、転校しちゃうのにそれはないよ。」
美優が立ち上がり前田加奈を睨みつける。
「美優ありがとう!でも、大丈夫だよ。前田さんはいつも面と向かってなんでも言ってくれる数少ないクラスメイトだから...。」
影でしか悪口を言われない私にちゃんと面と向かって言ってきたのは前田さんだけ。
正直すごく傷ついたしなんでって思ったけど...
今は嫌な人なんて思ってないし、むしろ自分の意見をはっきり言える強い人なんだなって思う。
「な、なにそれ。別にあんたに庇ってもらいたくないんだけど。」
「もし...私がもっと...心開いて、前田さんに歩み寄ってたら友達になれたかな?」
「...。」
目線の合わない前田さんは何も言わない。
「まぁ...そうだよね。」
近くに来てくれた美優の手を握りしめた。
前田さんは鞄に荷物を詰めて歩き出した足は私の横で止まった。
「...なれたんじゃないの。分かんないけど。」
それだけ言うとさっさと教室を出てしまった。
「...そっか。」
後悔...からなのか嬉しくてなのか分かんないけど堪えていた気持ちが一気に溢れ出てしまう。
もう同じ過ちは繰り返さない。
私はそう心に誓った。