蜜月は始まらない
どうしよう。あれは高校生だった頃の錫也くんの写真を見て思わずつぶやいたセリフでしたなんて、素直に答えられるわけがない。

……いや。もしかして今が、自分の想いを伝えるタイミングなのではないだろうか。

さっきここに来る前、根本さんに背中を押されて決意したじゃないか。
錫也くんにこの気持ちを、正直に伝えようって。

……今。まっすぐ、彼に。

私の右手を包む錫也くんの手に、そっと自分の左手を重ねた。

驚いた表情をする彼から視線を逸らさないよう、見上げる。



「元カレのことは、本当に、なんとも思ってないよ。お見合いをした時点で、とっくに吹っ切れてた」



話しながら無意識で、錫也くんに触れる手に力がこもる。



「あのとき見てたのは……錫也くんの、写真で。だから、つまり……」



言葉を切って、こくりと唾を飲み込んだ。

まっすぐ届けと、願いながら。



「……私が好きなのは、錫也くん、あなたです」
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