蜜月は始まらない
とかなんとかやっていたら、危うくのぼせそうになってしまった。

同居生活開始早々、そんなヘマをやらかしたらいよいよやばい。

温度を下げたシャワーを浴びて身体の火照りを冷ましてから、お風呂場を出た。



「あれ……?」



就寝用のルームウェアを着ようとしたところで、思わず声が漏れる。

下着はつけた。上に被るモコモコ素材の長袖ワンピースは、今手に持ってる。

……下に履く、黒いレギンスはどこ?

洗濯物を入れるカゴなどを探してみても見つからない。冬に重宝する、裏起毛があったかくてちょっとゆったりめなレギンス。

もしかして私、部屋から持って来るの忘れちゃった……?

顔からさーっと血の気が引く。

ピンチだ。

手の中にあるパステルカラーのモコモコはワンピースといっても、丈は太ももの真ん中あたりまでしかない。
これ1枚で着るには、ずいぶん心もとないのだ。

自分の部屋に行くためには、リビングを通らなければならない。

つまりこの短いワンピース姿を、錫也くんに見られてしまう可能性があるということで。

それは……なんか……恥ずかしいというか、申し訳ないというか、とにかく避けたい。

さっきまで身につけてた、スキニーパンツを履いて出ていく?

でもお風呂上がりに、1日履いたズボンをまた履くのも……。

というか私もしかして、そもそも意識しすぎ?

別に、錫也くんくらいモテる人なら今まで散々美脚なんて目にしてるだろうし、私ごときの生足見たところで何とも思わないのでは……??

いやむしろ、わざわざこっちに視線寄越したりもしないのでは??!
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