デキる女を脱ぎ捨てさせて
 6時までには時間があったので仕事を進め、そして30分前の5時半に車に乗った。
 公民館は工場から離れた山の奥深いところに建っている。

 車を走らせ木々の間から建物が見えて来た。
 山野公民館だ。

 私は懐かしくて目を細めた。

 私が子どもの頃も大太鼓は盛んで、その頃もおじさんが教えてくれていた。

 私はといえば、子どもの頃は太鼓をたたくことに興味がない子だった。
 それが今はこうしてお願いをしに来ているのだから人生って本当に分からない。

 公民館に着くと既に大太鼓の音がしていた。
 ドーン。ドーンと、体の芯まで響く感覚は久しぶりで身震いがする。

 早い時間からの練習は子どもの練習時間。
 そう。これでも子どもの音だ。
 大人のは今以上に迫力が違う。

 私の少し前を歩く彼の手には何箱も入った紙袋。
 アレの正体はラスクにポルボロン、クッキーにパイも他にもたくさんある。

 色彩も鮮やかな包装紙に包まれたそれらは全て本社の方で流行っているおじさんの言う『ハイカラ』なニオイがするお菓子たち。

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