デキる女を脱ぎ捨てさせて
 最近、私は秘書のいない倉林支社長の秘書のような仕事が多い。
 彼のスケジュールを把握して、それに応じて新幹線のチケットを手配したり、会議室を取ったり。

 会議に出れば議事録を取って、それをまとめることも増えた。
 最初こそ撃沈した専門用語も慣れて来てどうにか議事録くらいはまとめられるようになっていた。

 本社からの対応も彼の仕事のうちらしくよく呼び出されたりもしている。

 今も本社からの電話に対応していた倉林支社長の口調が慌ただしくなって何か無理を言われたのが分かった。

「今日ですか?
 分かりました。調整してみます。」

 受話器を置いた倉林支社長が電話の口調そのままに慌ただしく私に確認を求めた。

「西村さん。急で悪いんだが今日の予定は?」

「午前中は社内で打ち合わせ。
 午後は工場の方へ工業排水のことで業者の方との立ち会いがあります。」

「社内の打ち合わせは延期の連絡をしてくれないか。
 立ち会いは松嶋工場長に頼めないか私から聞いてみる。」

 毎度のことながら本社様様だ。
 支社長の仕事をなんだと思っているんだろう。

 度々、急に呼び出される本社の誰だか知らない重役に腹を立てながら社内の関係者に打ち合わせの延期メールを送る。

 倉林支社長も松嶋工場長と話がついたようだ。
 鞄を手にして準備をしている。

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