御曹司は眠り姫に愛を囁く
「社長、凛音様をお連れ致しました」

池口さんは私をレストラン奥の個室へと案内する。

ダークブラウンのスーツを着た柘植社長はタブレット覗き見て、仕事をしていた。

「ご苦労だな。池口」

池口さんは私をテーブルに案内すると椅子を引き、「どうぞ。お座りください」と声を掛けた。

「ありがとうございます」

私は腰を下ろし、柘植社長と顔を合わせた。

「私は外でお待ちしておりますので、ディナーの終わりの際はご連絡ください。社長」

「わかった」

池口さんは私と柘植社長を残して個室を出て行った。


「君は写真で見るよりも真澄に似てるな・・・」
柘植社長は切れ長の瞳を細めながら潤ませて、私の中に亡き母である女性の面影を追っていた。

「初めまして…柘植社長。貴崎凛音です」

「凛音と言う名前は真澄がつけたのか?」

「はい」

「いい名前だ。君はワイン飲めるか?」

「沢山は飲めませんが、嗜み程度なら・・・」

「そうか・・・」
柘植社長はソムリエを呼び、ワインをオーダーした。


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