御曹司は眠り姫に愛を囁く
フランスのワインで有名なボルドー産で、私の生まれた年に製造されたで赤ワイン。

「乾杯」
父と娘の再会を祝し、グラスを鳴らして乾杯した。

「真澄が事故で亡くなったコトは貴崎さんから訊いた。
私と真澄の娘である君を引き取りたかったが・・・その当時、私は海外赴任でドバイに居た。両親にも反対を受けたし、それに、貴崎夫妻が君を養女にしたいと強く希望したから、引き取るコトは出来なかった」

「柘植社長は昨年、ご結婚されたんですよね・・・」

「まあな・・・今の妻とは初婚。私はこの歳になるまで、結婚しなかった。
亡くなった先代の社長である父には結婚しろと何度も迫れたが、私は真澄を忘れられず、ずっとできなかった」


前菜が運ばれ、ディナーが始まる。

「実の母である真澄さんは、私が二歳の時、事故で亡くなった為、私が母だと思っている人は貴崎さんです」

写真でしか見たコトの実の母。

私は思い浮かべる母は今も育ての母。


「柘植社長が知ってる限りでいいんです。
私に真澄さんのコトを教えてください」


「いいよ・・・」

柘植社長は目尻にシワを幾重にも作って穏やかに笑い、二人の恋愛話を話してくれた。

「私と真澄はシェイクスピアの戯曲で有名な悲恋物語の『ロミオとジュリエット』だったと思う。
私は御曹司で、彼女は普通の女性。
当初から、両親は私と真澄の交際を反対していた。
でも、私は両親の反対など・・・二人の愛で乗り越えて見せると思っていた。しかし、真澄は違った。
彼女の方が身を引いてしまった・・・」







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