御曹司は眠り姫に愛を囁く
以前と変わらなず普通に会話が出来、胸は嬉しさで湧き上がる。

でも、会話は直ぐに途切れ、お互いにだんまりムードになった。

次第に階下を降りていくペースもコンパスの差で、彼の方が私を追い抜いた。
私は彼の背中を追い、追いつこうと階段を下りる。
背後から見る彼の姿。
高身長で、手足も長く、背筋がピンと伸び、肩幅の広さ、筋肉質な二の腕。

彼には全く非の打ち所がないるモデル並みのスタイル。

「美樹に会っただろ?」

「美樹?」

彼は下の踊り場で足を止めて、振り返りながら問いかけた。


「昨日、俺と一緒に居た女だ・・・」

あ…あのいけ好かない女性の名は美樹さんか・・・


「なんか言ってた?」

「別に…何も・・・」

「そう」

「彼女ですか?」

私はさりげなく、質問してみた。

「彼女?別に・・・カラダだけの友達だ。
俺は近いうちに、父の決めた相手と見合いして結婚する。
御曹司ではよくある政略結婚だ・・・」

「椎名…さん」

「だから、今の間に女遊びしておこうと思って・・・」
セットされていないサラッと癖のない長い前髪を掻き上げ、瞳を寂しげに揺らめかせる椎名さん。

彼は何処か自分を作り、無理をしていた・・・



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