御曹司は眠り姫に愛を囁く
椎名さんが私の隣に腰を下ろす。

「似た女性が居ると思っていたけど、まさか…貴崎さん本人とは。どうやって、この店に入ったの?」

「実は私・・・今の父親と母親は伯父さんと伯母さんで・・・実の父親は会社の社長なんです」

「面白い冗談だね・・・まぁ、室雨から訊いて、ここに来たんだな」

椎名さんは室雨さんの差し金だと思い込んでいた。

「本当なんです」

私は語長を強める。

「その父と再会したのは最近で、今度父に勧められて、どこかの御曹司と見合いします」

「・・・話はいいから…何飲もうよ」
喉の渇きも忘れ、矢継ぎ早に話をしていた私。

椎名さんに言われ、口を閉じた。

「何飲む?」

「えーと・・・」
私はカクテルのアラカルトを見て、カンパリオレンジを指差す。

「カンパリオレンジだね。じゃ、俺はバーボン」

カウンターの中でシェーカーを振るバーテンを呼んで、ドリンクをオーダーしてくれた。


< 137 / 171 >

この作品をシェア

pagetop