御曹司は眠り姫に愛を囁く
高級ラウンジ『プラチナ』
基本的に照明はテーブルやカウンターに所々置かれたキャンドルと間接照明のみで室内はほの暗い。

お連れさんの居ない私はカウンターの椅子に案内された。

客層は私が行くチェーンの居酒屋のように酒を飲みながら、ワイワイする庶民的な雰囲気は皆無。
皆、ゆったりとした座り心地の良い椅子に腰を下ろし、寛ぎながら全面硝子越しの東京の摩天楼を眺め、お洒落なカクテルを飲み、小声で話をしていた。

静寂の中に垣間見えるセレブリティ。


その上品さ漂う気圧に押され、私は場違いな所に来たと後悔した。

でも、柘植社長に迷惑を掛けた分の成果は欲しい。

私は皮張りのアラカルト見る振りをして、周囲を見回し、椎名さんの姿を探す。


「君、さっきからキョロキョロしてるけど・・・今夜の相手探してるの?」

私の挙動不審な態度は目立ち、一人の男性が近づいてきた。

彼は私の隣の椅子に腰を下ろす。
左手首には眩い光を放つ高級腕時計。
彼の着けているネクタイのピンは有名ブランドのロゴ入り。
さりげない雰囲気で身に着けるブランドはお洒落だと思うが、人に見せつけるようなブランドの身に着け方は成金のようで、嫌だった。

「私は別に…人を探してるだけです」

「それは男でしょ?見つからないなら、俺にしなよ」

「それは・・・」

「・・・待たせたな」
ともう一人男性が近づいてきた。

「椎名…さん?」

「やっぱり、貴崎さんか・・・」
男性か軽く舌打ちして退散した。
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