御曹司は眠り姫に愛を囁く
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私はアルコール度数の低いカルーアミルク、
須藤さんはウィスキーの水割りをオーダーした。
全面硝子張りのテーブル席に腰を下ろして、夜景を眺めながら、二人で飲み直した。

居酒屋のような喧騒感はなく、静寂が辺りに漂っている。

ドリンクが届くと互いにグラスを当てて、静かに乾杯した。

須藤さんはひたすら言葉を発せず、ウィスキーのグラスを傾けて、喉に通す。


「キレイですね」
須藤さんがテーブルにグラスをおくと中の氷がカランと音を立てて揺れた。


「貴崎さん、俺と付き合って欲しい」

「須藤さん・・・」

唯の同僚をこんな夜景のキレイな場所に誘うコトはない。
およせの想像はついていたが、私は須藤さんの思いに添えなかった。


「ゴメンなさい・・・須藤さん」

「・・・即答か・・・付き合ってる人は居ないんでしょ?」


「いません」

「好きな人は?」

「いません」

「じゃ俺と・・・」


同じ失敗を繰り返しては、稜さんとの別れは報われない。

「ゴメンなさい・・・今は恋愛よりも、仕事を優先したいと言うか」
仕事に生きがいを持つタイプの女性ではないけど、恋愛からは遠ざかりたかった。


「もしかして、過去の男に縛られている?」

「えっ?」






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