World End 〜七情の泉〜
翼は顔をベッドに埋め悶えながらも、手探りになにかを探し始めた。右手が左右行ったり来たり。ピタッと動きを止めて顔を上げた。



「あれ!? ケータイ! 何処いった!? もー!! 何で!? ちゃんと目覚ましかけてたのに!! てか今何時!?」

「ただ今正午を少し過ぎた頃でございます」

「え!? 正午って12時過ぎってこ__」



咄嗟に聞き返したものの、侍女を見て口を固まってしまった。驚く翼をよそに、侍女はおへその下で手を重ねたまま腰をおり軽く頭を下げた。



「昨夜お戻りが遅かったので、ゆっくりおやすみ頂ければと思いお声を掛けるのが遅くなってしまいました。 大変申し訳ございませんでした」

「…………」



更に頭を下げ、深いお辞儀になる。詳しい事情までは分かっていないが、翼の慌て様から朝起きたかったらしいというのが分かった侍女は、頭を下げたまま申し訳なさそうな顔をしている。


ついさっきまで翼の頭の中は友達との海の約束の事でいっぱいだったが、今では目の前の侍女の事で頭がいっぱいだった。


バッと上を向けば見覚えるのあるレースの天蓋。見渡せば白で統一された室内。翼の体に嫌な汗が滲む。


そしてふと視界に入るフリフリの袖。ゆっくり上半身を起こし、恐る恐る下を向いた。胸元にはリボンがつき、レースのヒラヒラが首元、そして裾に施されていた。



「いーやぁぁぁあぁあ!!!! 何この格好!? ギャアァア!」



突然の叫び声に驚いた侍女は顔を上げた。


翼は普段可愛らしい格好をしない為、自分の着ているワンピースタイプのパジャマを見て全身に鳥肌がたった。





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