World End 〜七情の泉〜
侍女が両手を広げて遮光カーテンを開けると、室内に暖かな光が差し込んだ。太陽の明かりが室内を照らすも、天蓋が付いているベッドへの光は弱まり、グッスリ眠りについている翼へは届かない。


室内の全てのカーテンを開け終えた侍女はベッドへ近付いた。絨毯が敷かれている為ふつうに歩けば足音はしないが、それでも何処を歩いても足音を立てないよう教育を受けている為、絨毯の上では気配を消しているかのごとく音がしない。



「救世主さま、お昼でございます」



爆睡…と言っていいほど深い眠りについている翼は繭の様に布団にくるまりピクリともしない。顔の側に耳を寄せれば微かに寝息が聞こえる。



「失礼いたします」



躊躇いながら侍女の手が翼へ伸びる。肩に触れ、優しく揺らす。



「お昼でございます」



今度は先程よりも顔を寄せ、より近くで先ほどと同じ台詞を口にした。翼は肩をピクっと動かすと、薄っすら目を開けた。顔には出さないが内心ホッとした侍女はまた少し距離をとる。



「あ、さ……?」



寝ぼけ顔に寝ぼけ声。



「いいえ、お昼でございます」

「__昼!?」



本日3度目の『お昼でございます』という台詞だが、翼は初めて聞いたと言わんばかりに布団をめくり飛び起きた。だがベッドに足を付けた途端翼はヘナッと座り込むと顔を埋めた。ベッドをグーで何度も叩きながら悶えている。それもそのはず。前日の夜後先考えずに全速力で走ったせいで、足が_特に足の裏が傷だらけでまともに足をつける状態ではなかった。





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