風船の中に宇宙は広がる。
それからの毎日は、それはもう目まぐるしくて。

軽音部を無理矢理設立した悠は、いつの間にか私を二人目の部員に入れていた。
軽音部の部員は悠の勧誘によりどうにか集まり、私たちは毎日放課後に集まっては楽器を弾いていた。

悠はギターを弾いてはメロディーを譜面に起こし、歌詞を付けてよく私たち部員に聴かせた。


「綾、学園祭に出よう。」


ある日突然発された悠のその言葉に、私は思わず持っていたギターを落としそうになる。


「え、いや、待って。私まだ上手く弾けないし…。」

「大丈夫だって。ステージの経験は多い方がいいし。」

「でも…。」

「大丈夫。俺が綾を引っ張ってく。」


強引で、だけど、頼もしい。


「…ほんっと急だよね、悠は。で、メンバーは?」


私の返事に、悠は嬉しそうに笑って、口を開いた。


「俺と、」

「うん。」

「綾。」

「うん。」

「…。」

「…え?」

「え?」

「で?」

「で?って…、何。」

「いや、悠と、私と?」

「うん。」

「いや、その他は?」

「え、いないけど。」

「いない!?」

「ああ。俺と、綾、二人で。」


あまりにも突然で、あまりにも驚きの提案を、悠はさも当たり前かのように言い放つ。


「待って待って、二人でバンドするの?」

「そう。俺がボーカル、綾がギター。他の奴らは俺らより経験が圧倒的に少ない。」

「それを言うなら私もでしょ!?」

「綾は弾けるようになっただろ?」

「簡単なコードだけだよ!?」

「簡単な曲を選ぼう。」

「うん、ありがとう。…じゃなくて!」

「大丈夫だよ、綾。何かあったら俺がフォローする。」


不安はないのだろうか。
私なんかを隣に置いて歌うことに。


「綾のギター、俺は好きだ。」


ボーカルとギター、どっちがいいか。
高校入学前にそう聞かれて、私はギターを選んだ。

歌うことがそれほど得意でないというのもその理由の一つだった。
でも、それは一番の理由ではない。

一番の理由は…。


「…私も、悠の歌が、歌声が、好き。…言い出しっぺは悠なんだから、ちゃんとフォローしてよ。」


悠の歌声が好きだから。
悠の創る歌詞、悠の創るメロディー。
そのどちらも、私は好きで。
それを誰かに届けるなら、力強くも優しい悠の歌声に乗せて届けたい。
そう思ったから、ギターを選んだんだ。


「おう、任せろ!」


悠となら、なんだって出来てしまいそうな気さえした。
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