涙味のさくらんぼ
静かな足音
放課後になると、すぐにグラウンドに立つ。そして、男子サッカーと合同で練習試合を行う。この時のメンバーはレギュラーメンバーとスタメンだけ。朝のメンバーはマネージャーと一緒に、見守りや、自主練をする。
足の違和感も今は大丈夫らしい、顧問が、到着する頃には、私達は城間を中心にアップランニングも終わり、ストレッチも終わっていた。ミーティングの時、合同練習に出るメンバーを発表された。私は変わらず、CFで、真理子とさつきとメイ華とリン子ときのとあとはスタメンで、ベンチメンバーが出ることになった。珍しく、城間とさつきはベンチに回された。大会と同様に試合が始まった
男子部員は、決して強くはない、しかし、粘り強くプレーをすることができる。でも、伽凛の技術はそんな壁をスイスイと破り、どんな細かい隙間からでもゴールを決めることができた、男子サッカー部のコーチも両手を上げてお手上げポーズをとった。点数は10以上も離されて、女子チームの勝ちとなった。
試合終了後、キーパーの元へ行く最中また、
左足の付け根に違和感を感じた、そしてそのまま、倒れ込んだ。
「かりーん!かりーん!!大丈夫かよ??」
真理子がすぐに駆け寄ってきた。それを聞いた顧問も、男子部員の数名も駆け寄ってきた、左足に全然力が入らない。立とうとしても自力では立てない。真理子とコーチに支えられようやくキーパーの所に着いた。
顧問は言った。「いつからか?試合中も我慢していたのか?」伽凛は首を振った。
少し休めば治る。そう信じて、キーパーの横で部員の練習風景を眺める。伽凛が抜けたサッカーの雰囲気は、なんだか重かった。
帰りは、真理子の親に送ってもらうことになった。「すいません、お願いします。」というと、真理子の両親は「何言ってるの?まりの幼なじみでもあるし、私たちの次女でもあるのよ!」真理子の両親はすごく優しい。
真理子とは幼稚園からの仲だ。真理子のお兄さんの影響でサッカーをはじめた。真理子はまだ、おませさんで人形遊びをしていた時期、私は太陽の下でボールを蹴っていた。
真理子がサッカーに入ったのは小学四年の時だ。入って早々、「かりんが一番かっこいい!」と言われた。そしてお互い助け合いながら中学もサッカーひとすじに頑張ってきた。
高校受験の時、真理子は学力が足りなく、内申も悪かった為、一度おんなじ高校に行く夢は諦めていた。しかし、入試1ヶ月前に、いきなり受けてみるという姿勢で、本番を迎えた。ギリギリで合格することができたのだ、
そいうい訳で、真理子はずっと私の隣にいる。親友だ!
家に着くと、お兄ちゃんと双子の弟がテレビを見ていた。「ただいま!」3人とも伽凛を見るなり、「おかえりー」と言った。
「お母さんとパパは?まだ仕事?」
「うん、多分。レンジレンジのカレー食べれってよ」と兄は、テレビを見ながら言った。
はーいと声をかけ、風呂に入る。シャワーを浴びると、茶色い汚れが一気に真っ白のタイル床に広がった。足の付け根を押すと痛みはないが、少しビー玉ぐらいの硬さのしこりができていた。なにこれ、骨?伽凛はお湯に浸かった。何かの病気かな、でも他はどこも痛くないし、大丈夫だろう。
時計は夜の11時を回っていた。
お兄ちゃんは部屋に戻り、双子の弟とまた、テレビを見ていた。そこへ、姉ちゃんが帰宅した。姉ちゃんは2個上で大学生だ。でも、毎日バイトを2つ掛け持ちしていて、忙しそうだ。姉ちゃんが「ただいま、帰りました。工藤美羽です。」と言った。双子は一斉に「おかえり、ミワ姉。」私も続いて、「おはよー!」と言った。あ、間違えた。姉ちゃんは、 すぐ反応した。「かりんちゃん、お疲れモードでしょ?早く寝なよ明日朝練でしょ?」その通りだ。
私が動くと、双子も付いてきた。
「おやすみ!」そういうとお姉ちゃんは、手を挙げた。二階の部屋には、私とお兄ちゃんと双子の部屋と共同トイレがある。 増築したせいで部屋も
形もいびつだ。お兄ちゃんと私の部屋は隣り合っていて、その奥に双子の部屋がある。兄ちゃんとは一個しか変わらない。兄ちゃんは普通高校でバスケ部に入っていたが、サボり気味であまり部活に行く様子は見られない。
私は部屋に入ると電気をつけた。制服アイロンしなきゃ。棚の上にあるアイロン台に手を伸ばす。その瞬間、足に力が入らなくなり、
ガガ…ガッシャーンと、アイロン台が落ちてきた。下の階からは姉ちゃんが、えーーー?と叫ぶ声が聞こえ、兄ちゃんが部屋に入ってきた。「え?大丈夫か?転んだのか?」にいちゃんはアイロン台を立てて、立ち上がれずに座り込んでる私をひょいと持ち上げて、ベッドに運んだ。「お前、足どうした?」私は
「大丈夫だよ、ちょっとくじいただけ」と言った。兄ちゃんは気をつけて、と言い自分の部屋に戻った。その夜、高い熱が出た。朝方、お母さんが熱さまシートを変える時、私は目を覚ました。お母さんは、にこにこしていて優しく手を握っていた。
私の熱は、朝になるとすっかり良くなっていた。時間は8:00下に降りると懐かしいパパの姿と、お兄ちゃんとお姉ちゃんが朝食を食べていた。双子はもう学校に行ったらしい。
「おはよう!」パパはちらっとこちらを見ると、「かりん!おはよう!なんだか久しぶりだな!」と言った。お母さんは、あら体調は?というジェスチャーをする、私はガッツサインを送ると、お水を飲みながら席につこうとした瞬間、バシャッ、カラーン。コップが落ち、水がこぼれた。それから倒れ込んだ。
「かりん!????」お母さんはおたまを置き、私のところに飛んできた。お姉ちゃんも、「え!かりんちゃん??」パパも私を見ながら大丈夫か?って言う。「うん、大丈夫だよ」でも足に力が入らない。たてない、お兄ちゃんとお母さんがわしをソファーまで支えてくれた。パパは「かりん、足どうした?いつからだ?」と、顧問と同じ事を聞く。
私は、最近足が変とだけ言った。お母さんは「今日念のため病院行ってくるわ」と言った。今日私は生まれて初めて学校を休んだ。今まで病気にかかったことはなく小中皆勤賞だった。
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