おはようからおやすみを笑顔で。
「子供……?」

彼の口からゆっくりと紡がれる、その言葉。

その続きを聞くのがなんだか急に怖くなって、ぎゅっと目を瞑った。


するとーー




「そりゃあ、いつかは欲しいに決まってるだろ」



え……?


子供欲しいって言った?



顔を上げて、多分変な表情で彼を見ると、小さく首を傾げられる。



「なに? 俺、変なこと言った?」

「え、いや……」

「子供、そりゃあ欲しいよ。沙耶に似たら、男の子でも女の子でも凄いかわいいだろうな」

やさしく微笑みながらそう話す彼は、とても嘘を吐いているようには見えない。


でも……



「白井さんが……」


つい、口に出してしまったその名前。

それに反応して、斉野くんが「白井?」と聞き返してくる。


「白井がなに?」

「あ、いやその……」

「言って」


……誤魔化してもいいことはないって、凛花ちゃんや神代くんとの件で思い知ったから、私は先日、白井さんと薬局で会った時のことを話した。


すると、斉野くんはハーッと深い溜め息を吐く。


「あのなあ、あいつの言うことは信用するな」

「え?」

「あいつ、お前のこと狙ってたことがあったんだよ。連絡先教えろってあまりにしつこいから俺の彼女だって伝えたんだけど……まさか、偶然とはいえお前と直接接触するとはな……」


そう言えば白井さんが、

『俺が沙耶さんを紹介してほしいって言うと、斉野さんめちゃくちゃ怒るんですもん』

って言っていたっけ……。
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